【グランドホテル】あらすじとネタバレと感想と。

サスペンス

グランドホテル方式という言葉をご存知でしょうか?ストーリー手法のひとつでもある群像劇の別名であり、名前を冠することとなった元ネタがこのグランドホテルに他ならないのです。

どういう物を指すかというと、一つの空間に様々な人が行き交い、それぞれの思惑によって生まれた事件や恋は数珠繋ぎのようにまた次の局面へと向かい、予想もしない着地をしてまた新たな物語が生まれる。

簡単に説明するならこうなるのですが、群像劇には人か空間があれば物語が生まれ、物語の一部を切り取られた部分とまだ見ない物語を想像する楽しみがあります。

さらにグランドホテル方式には事件の局面をキャラクター視点で描かれるのです。

どういう事かというと、とある事件が発生し、Aさんの視点では事件は不幸な出来事として描かれます。一方Bさんの視点で同じ事件を観たときに、事件は幸運な出来事に描かれるのです。

これを可能にするのはキャラクター毎の思惑があるところにあります。(個人的にこれを人間賛歌と認識しています)キャラクターへの造詣が深くなるグランドホテル方式という言葉の語源でもある作品になります。

目次

あらすじ

落ち目を感じ疲弊するバレリーナ、彼女の真珠の首飾りを狙う男爵を自称する泥棒、会社の危機に合併工作を図る大企業社長と雇われたタイプライター、同企業の経理係をクビになり一生の思い出として宿泊する老人。ベルリンの一流ホテル「グランドホテル」を舞台に個性的な宿泊客同士が交錯していき、泥棒のとある行動によって事件が起きてしまいます。

以下、ネタバレがあります

自身に憂いている二人の場合

自身の落ち目を感じ疲弊するバレリーナのグルシンスカヤ夫人と借金を抱える泥棒の自称ガイゲルン男爵、立場の違う二人が本当の愛に目覚めていきます。

ガイゲルンは彼女の持つ首飾りを盗むべく部屋に潜みます。そこで知るのは栄華な時間を過ごす富豪ではなく悲哀に打ちひしがれるグルシンの姿でした。ガイゲルンは自身の境遇とあまりの美しさで夫人に惹かれていきます。

グルシンも表には出さない本当の自分に寄り添ってくれるガイゲルンに想いを寄せていき二人はウィーンで過ごす約束をします。

ガイゲルンは本気の愛に応えるべく借金を返済するため社長のプライジングの部屋で盗みを働くもののプライジングと鉢合わせたのち一方的な暴力によって息を引き取ってしまいます。

グルシンはその事実を知ることはなく、そこにはいないウィーン行きの汽車で待つガイゲルンに思いを馳せ、希望に満ちた顔をしてグランドホテルを去りました。残酷な事に劇中のグルシンは希望を持って退場しましたが、劇外でガイゲルンの顛末を知った彼女は辛いことにより過酷な人生を歩んでいくこととなるのでしょう、、

人を思いやる二人の場合

安い賃金でこき使われた挙句クビになりさらには医者から余命宣告を受けた元経理係の老人クリンゲライン。ガイゲルンの働きかけによってタイプライターのフレムヘェンとダンスに興じようとします。が、クリンゲラインにとって因縁のある社長のプライジングによって阻まれます。クリンゲラインは経理係時代には出来なかった社長への拒否をすることでフレムヘェンと踊りました。

一方のフレムヘェンも当初は愛していたガイゲルンと踊りたかったもののクリンゲラインの誠実さに寄り添う形で踊ることとなりました。

やがてプライジングがガイゲルンの命を奪うとクリンゲラインはプライジングにアリバイ工作を強要されてしまいます。が、またしてもこれを拒否しホテルへ真実を伝えます。

プライジングは逮捕されたものの愛するガイゲルンが亡くなり悲しむフレムヘェンを見捨てられないクリンゲラインはパリへの旅に誘います。そんなクリンゲラインの好意に救われた形で二人でグランドホテルを去りました。上記の二人とはまた異なった愛を見出した二人ですが、鑑賞側にも伝わる確かな希望を持った幕引きとなりました。

まとめ

グルシンとガイゲルン、クリンゲラインとフレムヘェン。当初は立場も違えば求める相手も違っていましたがお互いを理解するところから始まりました。

愛にも形はありますが誰もが羨む輝かしさが全てではないのでしょう。それをこの二組からは見受けられました。

そして群像劇の本質は様々な人間模様から生まれる愛情であり理解するという行動が物語を推し進める原動力だと改めて感じました。

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